世田谷区史編さん問題 〜歴史家から著作権を奪わないで!
区制90周年を記念して自治体史を編さん中の世田谷区でトラブルが起こっています。出版ネッツでは、この世田谷区史編さん問題について取り組んでいます。
2022年10月、同区の区史編さん委員である谷口雄太さん(青山学院大学准教授)から出版ネッツへ相談があり、つながりました。
谷口さんが訴えているのは、著作権譲渡と著作者人格権の不行使を条件とする執筆契約の強要と区職員によるハラスメントです。
歴史改ざんが可能になる「世田谷モデル」
このうち著作権問題については、朝日新聞と東京新聞が報じました。
朝日新聞(2月28日)
世田谷区史の著作権は誰に? 執筆者と区、トラブル防止承諾書で争い
東京新聞(3月7日)
世田谷区史の著作権は誰のモノ? 区と執筆者が対立している理由とは
著作者人格権とは勝手に改変されない権利を含んでいます。
自治体史の執筆において、歴史家から著作権を奪う(勝手に改変されない権利を含む)行為が何を意味するのか。
自分の知らないところで、勝手に改変されても文句は言えないということです。
自治体の意向に沿った内容、表現」というふわっとした、あいまいな、何でも含ませることができる言葉を使って、この記述はそぐわない、ふさわしくないとして、書き換えあるいは削除される恐れがあるのです。
実際、かつて流山市史では自治体にとって都合の悪い歴史(関東大震災時における朝鮮人虐殺など)を執筆者に無断で書き換え、裁判にまで発展した事例があります。
とはいえ、流山市の場合、著作権は著者にあったため、抗議して裁判することができました。
しかし、世田谷区の場合、執筆の条件として著作権を譲渡させるわけです。この条件をのまなければ、執筆させない、まさに「踏み絵」です。
世田谷区のやり方は非常に問題の多いやり方です。
あらかじめ歴史家の口を封じ、抗議の手段を奪ったうえで歴史修正主義を可能にするやり方に、私たちは強く反対します。
世田谷区役所前で抗議行動
出版ネッツでは区に対して話し合いの申し入れを行いました。区は、著作権問題については話し合いの場を設けたものの、一方的に打ち切り。ハラスメント問題については、谷口さんが区と雇用関係にないことを理由に拒否。
そこで、2月17日、世田谷区役所前で抗議行動を行いました。ネッツのメンバーなど約20人が集結。各自オリジナルのプラカードを持参し、ハラスメント問題に対応するよう声をあげました。
ちょうど昼休みとあって人通りが多く、チラシを受け取る人多数。質問をしてくる人もいて、行きかう人々にアピールすることができたのではないか、と思っています。
出版ネッツでは今後もこの問題の解決に向けて、区および関係各所に働きかけるとともに、広く社会に訴えていくつもりです。
みなさん、どうぞご協力ください。よろしくお願いいたします。