国会で著作権問題が議論に

フリーランス保護法に関する質疑を行う井坂議員

今国会(衆議院)では、2つの委員会で著作権問題(著作者人格権を含む)が取り上げられました。
出版ネッツは、世田谷区史編さんに係る「声明」を資料として議員に提供してありました。

1.4月5日内閣委員会で、フリーランス新法に関して
衆議院インターネットライブラリー
(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(211国会閣23)

井坂信彦議員(立憲民主党)は「成果物の権利(著作権など)の一方的取り扱い」を禁止事項に入れるべきではないか、と質問しました。
これに対し、後藤大臣は、「二次利用の対価を支払わないなどは、『不当な経済上の利益提供』にあたり、これはフリーランス新法で禁止している」と答弁。
井坂議員は「フリーランスガイドラインでは、『不当な経済上の利益提供』の禁止とは別項目で『成果物の権利(著作権など)の一方的取り扱い』を禁止している。これは、著作権問題が経済上の利益だけでなく、著作権がどちらに帰属するかなど、成果物の中心的テーマになる問題をはらんでいるからだ。なので、別項目で『権利の一方的取り扱い』を禁止事項に入れるべき」と突っ込んだ意見を述べました。

2.4月14日文部科学委員会で、著作権法一部改正に関して
改正されるのは、著作権管理団体の著作権料の分配に関することですが、この委員会では、著作権をめぐって、公平な利用と著作権者の保護との“バランス”についての質疑応答が繰り広げられました。
衆議院インターネットライブラリー
(著作権法の一部を改正する法律案211国会閣51)

1h24m45sのあたりから、森山浩行議員(立憲民主党)が、著作者人格権不行使について、質問しています。
その事例の一つとして「学者が書いた原稿が趣旨と違う形で載せられるという事件が起きている」という発言をしています。これは、世田谷区史編さんの事例です。
文化庁・杉浦氏の答弁は、「著作権に関する契約は、当事者が対等な立場で結ぶもの。著作者人格権については双方で(事前に)確認しておくことが求められる」とし、文化庁・ガイドラインを紹介(実は、このガイドラインは著作者人格権についてはあいまいな立場を取っているのですが)。「今後、文化庁ガイドラインや著作権について周知啓発していく」と発言しました。

別の議員の質問の中で文化庁は、「今後とも情報収集と発信を通じて著作権者の権利行使を支援していく」と答えています。

世田谷区史編さん問題という言葉こそ出てきませんが、国会(国レベル)で著作権譲渡や著作者人格権が問題になっていて、その事例として世田谷区問題が取り上げられています。世田谷区は、区史編さん委員への著作者人格権不行使の「押しつけ」、谷口さんの区史編さん委員委嘱の打ち切りについて、立ち止まって再考してほしいと思います。


(文責:杉村和美)