フリーランスの春闘宣言2023
2023年1月23日
ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)執行委員会
日々、さまざまなコンテンツ作りに勤しんでおられるみなさん、現場で働くみなさん、経営者のみなさん、そしてメディアとコンテンツに接するすべてのみなさん。私たちは出版ネッツと申します。この業界に働く、フリーランスの編集者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校正者などで作るユニオンです。デジタルからアナログまで、活字からオンラインまで、あらゆる媒体が私たちのフィールドです。
この春に、みなさんにお伝えしたいことがあります。
いま、コロナ禍と戦争が収束の兆しを見せず、経済が「安い日本」という構造から抜け出せていない中、これに物価高騰が追い打ちをかけています。
また、多くの反対の声を押し切って、この秋に政府はインボイス制度を実施しようとしています。この制度によって、フリーランスは減収となること、膨大な事務負担を抱えることが確実です。仕事減となるフリーランス、廃業するフリーランスもまた少なくないとみられています。
私たちはこの2023年が、フリーランスにとっての受難の年となることを恐れます。
私たちはコンテンツ産業を支えるクリエイティブワークの担い手であり、そして生身の働き手です。あらゆるメディア産業の現場で、なくてはならない存在であると自負しています。1970年代に、隆盛を極めたメディア産業によって大量に生み出され、業界を形成した私たちフリーランスは、産業の申し子にほかなりません。私たちがみなさんと協同して作り出すコンテンツは、商品であると同時に、文化的な価値を持つものです。そこにこそ誇りを持ち、やりがいを感じて、日々の仕事に取り組んでいます。
そんな私たちフリーランスの報酬は、何年も何十年も据え置かれたままです。1990年代に2万円だったものは、2020年代の今も2万円です。それがときとして引き下げられることを、私たちは幾度となく経験してきました。
仕事をして生活するという当たり前の循環すら成り立たないとすれば、コンテンツ産業は今後、次世代への継承すらままならない事態となっていくでしょう。創造の源泉である報酬の充実は、どうしても必要です。
この春、人材確保のために、大幅な賃金アップを実施する企業があります。人材流出の危機感から、政府、財界までもが賃上げに本気で取り組まざるを得なくなっています。この歴史的な分岐点に、フリーランスの報酬のみが据え置かれることは、時代と社会の要請に逆行するものと言わざるを得ません。
この産業の業界天気図は、21世紀に入ってよりずっとどしゃ降りが続いています。その最大の要因は、クリエイターを大切にせず、使い捨てにしてきたせいではないでしょうか。何年も何十年もフリーランスの報酬が据え置かれ、クリエイティブワークにコスト削減圧力が向けられているという事実は、コンテンツ産業の将来に必ずや重くのしかかっていきます。働き手を尊重しない産業は必ず衰退します。それは、人を大切にしないことで衰退してきたこの国の姿と重なります。
コンテンツ産業に働くみなさん、創造の成果を世に問い、知的生産に取り組む、すべてのみなさんに改めて訴えます。私たちフリーランスの報酬を、10パーセント増額してください。
コンテンツ産業に従事する私たちフリーランスは、団結し、仕事と生活を守り抜きたいと考えています。
歴史的な2023年春闘の果実が、フリーランスにも届く春となりますよう、すべてのみなさんに訴えます。
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