9月4日「生成AI問題と著作権」勉強会報告(第1部-1)基礎知識のレクチャー 前編

2025年9月4日、出版ネッツ主催の「生成AI問題と著作権」勉強会がオンラインにて開催された。
講師は、知的財産法・著作権法の専門家で、山形大学准教授の佐藤豊さん。
第1部は〈基礎知識のレクチャー〉、第2部は〈事前質問への一問一答〉、第3部は〈被害事例〉と〈質疑応答〉で、ネッツ組合員と外部の方を合わせて約70人が参加。充実した内容の勉強会となった。
この勉強会の内容を4回にわけて報告する。
第1部-1〈基礎知識のレクチャー〉
◆著作権制度とは何か?
基本的な知識として「著作権制度」について押さえておきたい。
「著作権」とは著作物を創作した者(著作者)の権利のことで、「著作物」とは思想や感情の創作的表現で、文化の範囲に属するもの。したがって、いまだ表現に至らず、思想または感情そのもの(アイデア)にとどまるもの(例:画風)は保護されない。また、表現であっても、創作的でないもの(例えば定規で引いた線のような、誰が表現しても同じもの)は著作物には当たらない。
また、著作権はすべての利用行為に及ぶわけではなく、著作権法が列挙する行為にのみ及ぶ。
著作権法は、著作者がその著作物について、それをする権利を専有すると規定することで、著作権が及ぶ行為を列挙している(支分権該当行為)。これには「複製権=複製をされない権利」、「公衆送信権=不特定または特定多数の者に向けた送信をされない権利」などがある。
著作権侵害だとするためには、次の3点が必要とされる。
①依拠(元の著作物の表現を認識していたということ)
②類似性(元の著作物の創作的表現の本質的特徴が再生されていること)
③支分権該当行為(著作者が著作物について、それをする権利を専有するとされる行為であること)
◆そもそもAI生成とはどんなものか?
世の中には多くの生成AIがあり、オフラインで使用されるものもあるが、ほとんどがウェブベースで提供されている。多機能の生成AIには、ChatGPTやClaude、Geminiなどがあり、文書やコード、画像などの多様なジャンルの出力が可能となっている。
なかには、画像生成に特化したものや作詞・作曲と音源生成に特化したもの、音源生成とAIカバーに特化したものもある。
生成AIの特徴を簡単な模式図にしたもの(図1)を見てみよう。

図の左側から右側に時系列が並んでいる。まず、AIを動作させるためには「学習済みモデル」を作る必要がある。インターネット上のテキストや画像、音声などを収集し、学習させることで作られる学習済みモデルは、Google、Meta、Microsoftなどのテクノロジー企業などによって提供されることがある。
次に、利用者がAIにプロンプト(指示や質問)を入力すると、AIは学習済みモデルなどを使いながらプロンプトに応じた出力をする。
このようにして生成AIが利用されるわけである。
◆生成AIと著作権の関わりとは?
生成AIと著作権に関しては、所管官庁による文書がいくつか出されている。その中でメジャーなものは、次の2つ。
①文化審議会著作権分科会法制度小委員会が作成した「AIと著作権に関する考え方について」(2024年)
②文化庁著作権課が作成した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年)
①は、AIによる創作過程において、既存の著作物の著作権と具体的にどんな衝突があるのか、所轄官庁による考え方をまとめたもの。②は、AI開発者や提供者、事業活動で利用する者の視点から、どうしたら著作権侵害などのリスクを軽減できるのかを示したもの。
出版ネッツの組合員(デザイナー、イラストレーター、漫画家、ライター等)にとって重要となるのは①なので、こちらをメインに説明する。
図1で見るように、AI生成には「AI生成の前段階」と「出力するプロセス」の過程があり、それぞれに問題がある。
たとえば、AIがインターネット上に存在する創作物を取り込む際、創作者の承諾を取って取り込む場合と、無断で取り込む場合がある。
また、利用者がプロンプトを入力するときに、既存の著作物を入力窓口に貼って「これを○○風に加工してください」などと使う場合がある。
さらに、出力されたものがいろいろな場面に利用されることもありうる。
これらの問題を議論する前に「著作権の制限規定」について説明する。
著作権法には、著作者に対して「著作物を無断でコピーされない権利」「無断でウェブにアップされない権利」などが記載されているが、ある条件が満たされると、これらの権利を行使できなくなる(「著作権の制限規定」)。つまり、利用者側からすれば、自由に使っていいことになる。
この著作権の制限規定について書かれたものが「著作権法30条の4」で、「著作権者の許諾がなくても著作物を利用することができる」とする条文である(図2)。そのポイントとなるのが「享受目的」があるかどうか、である。

享受には、著作物を人間が観賞したり、楽しんだりするという意味があるが、「享受目的がない」場合には、著作権侵害には当たらない。
また、47条の5についても、電子計算機による情報処理やその結果の提供に付随する軽微な利用については、前述の「著作権の制限規定」が適用され、利用者が使うことができる。
(まとめ:佐久間真弓/ライター)
※図1・2は、講師の山形大学准教授・佐藤豊さんから許可を得て転載
第2部〈事前質問への一問一答〉はこちら
第3部〈被害事例〉と〈質疑応答〉はこちら


