9月4日「生成AI問題と著作権」勉強会報告(第1部-2)基礎知識のレクチャー 後編

2025年9月4日、出版ネッツ主催の「生成AI問題と著作権」勉強会がオンラインにて開催された。
講師は、知的財産法・著作権法の専門家で、山形大学准教授の佐藤豊さん。
第1部は〈基礎知識のレクチャー〉、第2部は〈事前質問への一問一答〉、第3部は、〈被害事例〉と〈質疑応答〉で、ネッツ組合員と外部の方を合わせて約70人が参加。充実した内容の勉強会となった。
この勉強会の内容を4回にわけて報告する。
第1部-2〈基礎知識のレクチャー〉
さて、ここで、「AI生成の前段階」と「出力するプロセス」に分けて「著作権の制限規定」について説明したい。
〈AI生成の前段階:学習済みモデルの作成―1〉
既存の著作物を学習対象にした場合、著作物の「複製」が発生するが、享受目的のない情報解析の利用については、権利制限が適用される(利用可)。
一方、学習対象とする著作物の創作的表現の出力を意図した学習は、「享受目的あり」とされ、適用対象外となる(利用不可)。
たとえば、ジブリ風の画像を出力するためにジブリ作品を集中的に学習させた結果、作品群の創作的表現が共通した場合は、学習に伴う「複製」には享受目的があるとされ、適用対象外となる(利用不可)。
ただし、作品群の作風が共通しているだけであれば、享受目的があるとはされない(利用可)。
〈AI生成の前段階:学習済みモデルの作成―2〉
著作権者の利益を不当に害する場合には、適用がないとする(利用不可)。
〈AI生成の前段階:学習済みモデルの作成―3〉
情報解析に活用できる形で整理され、有償で提供されているデータベースの著作物を、AIに学習させるために複製する場合。
著作権者の利益を不当に害する場合には、適用がないとする(利用不可)。
〈AI生成の前段階:学習済みモデルの作成―4〉
著作権者が学習対象としないよう表明するだけでは、権利制限の規定の対象から除外されないと考えられている(利用可)。
〈AI生成の前段階:学習済みモデルの作成―5〉
ウェブ上の既公開著作物を要約して結果として出力するために、AIが検索して取得した結果の要約の過程で、システム内で生じる検索対象データの複製。
享受目的のない情報解析のための利用については権利制限が認められるが、検索対象データの創作的表現の出力を目的とするものとされる場合は、享受目的があるとされ、適用対象外(利用不可)となる。
〈出力するプロセス:生成そのもの〉
出力するプロセスには、プロンプトの入力がある。
プロンプト自体に著作物が含まれる場合、享受目的があると理解されるため、著作権の制限規定は適用対象外(利用不可)となる。
ただし、個人的に楽しむ目的で、どこにも公開せず、スマホの壁紙にするなど、そっと楽しむ限りにおいては著作権侵害にはならない。一方、出力したものをSNSに無限定でアップロードした場合、プロンプト入力自体も著作権の侵害にあたる。
◆AI特有の検討が必要となる「依拠」
最初に記述したように、著作権制度では「依拠」「類似性」「支分権該当行為」の3つの要件を満たせば、著作権侵害になると規定されている(図3)。

この中で、類似性と支分権該当行為については、AI特有の検討が必要とはされないが、「依拠」についてはAI特有の検討が必要とされる。なぜなら、AIを操作する利用者が、既存の著作物の表現を知っていたかどうかが問題となるからである。
では、依拠が成立するかどうかの判断はどうするのか。それについては裁判例を見ると理解しやすい。
それによると、既存の著作物の表現を認識していたかどうかの判断は、当該著作物に接する機会があったか否かにより推認される。
AI操作者が元の著作物の創作的表現を認識し、類似するようなものが生成された場合、AI操作者に依拠が認められるわけである。
◆最近のAIに関する動向
①日本:讀売・日経・朝日vs米パープレキシティ(生成AI事業者)の紛争
3社が無償で公開しているウェブ記事には広告がついているが、パープレキシティがプロンプトの要求にしたがって、ウェブ上の複数の記事を読み込んで提供してしまうため、3社のウェブページを訪れる利用者が減り、広告収入も減ってしまうというもの。現在、係争中。
②欧州:AI・データマイニング(情報の掘り起こし)規制
EU条約では、各国が著作権法の中に権利制限の規定を設けるよう定められているため、公開されている文書や画像などをAI学習などに使うことは原則として権利制限の対象となる(図4)。ただし、著作権者が学習対象になることを拒絶する意思表示をした著作物については、権利制限の対象外とし、AI事業者はそれを守るためのしくみを導入しなければならない。

③米国:学習段階における複製のFair Use(公正な利用)該当性を巡る裁判例
原告は複数の作家、被告はAI事業者という裁判例が2つ。どちらの判決も「AIの学習目的での著作物の使用はFair Useに該当し、侵害とならない」と説示。ただし、論理構成が微妙に異なる。
※図3・4は、講師の山形大学准教授・佐藤豊さんから許可を得て転載
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実は、AIについても、著作権についてもあまり詳しくない状態で視聴したので、終始「?」のまま終了。記事を書くにあたって、文字起こしと先生の資料を照らし合わせてようやく「なるほど」と納得。もう少し勉強してから参加すればよかったと反省しています。
(まとめ:佐久間真弓/ライター)
第2部〈事前質問への一問一答〉はこちら
第3部〈被害事例〉と〈質疑応答〉はこちら


