9月4日「生成AI問題と著作権」勉強会報告(第3部)〈被害事例〉〈質疑応答〉

2025年9月4日、出版ネッツ主催の「生成AI問題と著作権」勉強会がオンラインにて開催された。
講師は、知的財産法・著作権法の専門家で、山形大学准教授の佐藤豊さん。
第1部は〈基礎知識のレクチャー〉、第2部は〈事前質問への一問一答〉、第3部は、〈被害事例〉と〈質疑応答〉で、ネッツ組合員と外部の方を合わせて約70人が参加。充実した内容の勉強会となった。
今回は、第3部について報告する。

第3部
〈被害事例〉
漫画家Aさんから、生成AIによる著作権侵害の報告があった。
Aさんは「生成AIを使ったなりすましにあった人を知り、SNSで生成AIに反対する声を上げていた。私の発言を見た人から嫌がらせで『作家狙い撃ちLoRA(画像生成AI)を作った』と言われ、出力サンプル画像付きで配布されてしまった。しかし、複数の弁護士に相談しても『出力物から何を学習させたかを(当該LoRA作成者に)自白させないとわからない』と言われ、訴訟は難しいと言われた。出力サンプルも、キャラが同じでも類似性が認められるかは難しい。現状では違法であっても罪に問えない。被害にあっても泣き寝入りしている人は多い」と話した。

〈質疑応答〉
質疑では「機械学習を規制すると人間の学習も規制されるか?」との参加者からの質問に、佐藤さんは「人間が学習する際に記憶をしても、それは著作権法上の複製にはあたらない。したがって、機械学習に際しての複製を侵害にしたところで、人間の学習が規制されることにはならない」と答えた。

また、「パープレキシティ社が提訴された裁判に関連して、ユーザーからの求めに応じて新聞社のサイトから情報をPCメモリーに一時的に保存するということは複製にあたるか? 自分でもパソコンから情報や思想などの享受を目的としてインターネットを見る時にパソコンの中で一時的に保存されてしまうが、それは複製となり著作権の侵害になるのか?」。回答は「パープレキシティの件は30条の4の適用はないように思う。判決まで出れば侵害にあたるのでは。和解になるかもしれない。二番目の質問で、個人的に楽しむためであれば、30条が適用され侵害とならないケースが多くある。ただ、企業内でウェブページを閲覧する時は複製権の侵害が生じるのではという議論が出ているが、一般にはあまり気にされていない」と回答。

「私的利用の範囲であれば著作権侵害にはならないと言えるのか? 例えば卒業アルバムからディープフェイクポルノを作り、個人的に楽しむことは罪に問えないのか」の質問には「私的なところで行われる改変について、同一性保持権が及ばないという言説もあるが、直接的な裁判例があるわけではない」との回答。
※後日補足:ゲームソフトのセーブデータを改変するツールを提供した者について、同一性保持権侵害を認めた裁判例は存在する(ときめきメモリアル事件最高裁判決〔平成13年2月13日〕)。ただし、この説示がユーザ自身の行為に及ぶかは不明確である。

「スマホを持っていれば誰でもディープフェイクを作れる状態だと、誰でもが被害者になり得る。規制はできないのか」の質問には「規制が求められるとの認識は共有するものの、わいせつ物の表現規制とも同じ議論が出てきて難しい部分はある」と回答した。

その他、参加者から「漫画家さんからの被害報告の発言は胸に迫るものがあった。(権利侵害のない)適正な開発を望む人たちは団結して情報を共有したりしてロビー活動をしていく必要がある」などの発言や、主催者の一人からは「この勉強会の第3回では、どのような規制ができるか、今裁判をしている方をどう支援していけるかなどを考えたい。一人の権利のことであっても、全員の権利につながっていくことがあるので、対策会議みたいな会にできないかと思っている。実際に事例を出して申し入れをすることも大事。まず公的相談窓口を作ることが必要なのではないか」との発言があった。

(まとめ:生成AI勉強会プロジェクトチーム)

第1部-1〈基礎知識のレクチャー〉前編はこちら

第1部-2〈基礎知識のレクチャー〉後編はこちら

第2部〈事前質問への一問一答〉はこちら