宝島社契約解除裁判、二審も不当判決~書籍一冊請け負ったことを認めず~ 2026年3月19日
宝島社から書籍一冊の制作を請け負ったフリーランス編集者Iさんが、何度も修正を命じられたうえに一方的に契約を解除され、報酬も追加費用も支払われなかったとして、同社を訴えた裁判の控訴審が2026年3月19日行われ、東京高裁(谷口園恵裁判長)はIさんの請求を棄却する判決を言い渡しました。一審に引き続き、二審でもIさんの訴えは認められませんでした。

一審の東京地裁では、Iさんが制作業務を一括して請け負っていたことは認めたものの、著者・監修者の要望に添えず、同社の希望するスケジュール面にも応じられなかったと、偏った評価をしたうえで、契約解除は不法行為にあたらないとして請求を棄却しました。(一審の判決の詳細はこちら)
しかし、二審の東京高裁では、Iさんの業務は、書籍制作のうちマンガパート部分の編集のみであるとして、一括して請け負っていたことすら認めませんでした。さらに、業務は全体の過程からみればごく初期の段階にとどまっており、同社がIさんに支払った約35万円を超えるものとは認められないとして、Iさんの訴えをすべて退けました。判決内容は、一審より大きく後退ました。
控訴審に当たり、Iさん側は、同社による一方的な契約解除が下請法4条2項4号で禁止される「不当な給付内容の変更」に当たるとして、労働法、下請法、フリーランス法に詳しい岡田直己氏(青山学院大学法学部教授)による意見書(*)を提出していました。しかし、同意見書はIさんが一括して請け負ったことが前提となっているため、判決では一切触れられていませんでした。入り口のところで弾かれてしまい、一顧だにされなかった形です。
●契約書を作成しなかったことが、宝島社に有利に働く
判決後の取材に対して、代理人の本間耕三弁護士は次のように述べました。
「判決では、Iさんが本の制作にあたり、全体を統括する立場であることを無視しています。また、Iさんの業務を全体の一部分であるとした理由は、宝島社が業務開始に当たり契約書を作成しなかったことです。下請法違反になるのに、そのことが逆に、Iさんが制作業務一式を請け負ったという根拠にならない、と利用され、有利に働いてしまいました」
Iさんはくやしさをにじませながら、語ります。
「出版社がフリーランスに書籍一冊丸投げすることは、非常によくあることですが、裁判所はまったくわかっていません。私は出版社のデスクから外注者のコーディネートも頼まれていたというメールのやり取りも提出したうえで、マンガパートを担当するシナリオライター、本文を担当するライターたちと一緒に作業を行い、一審ではその外注者に証言もしてもらいました。すべて無視されました」
Iさんと一緒に作業をシナリオライターも、茫然としながらもコメントしました。
「仕事の成果はゼロ円です。私たちは著者の要望にも、具体的にいわれたことはすべて対応していました。制作中に、著者から『男性キャラにマルクスを語らせたくない』といわれたため、女性キャラに変えたら、今度は『男性に語らせたくないわけではなく、老人男性に語らせたくない。年配女性に語らせたい』といわれたため、年配女性キャラに変えました。このような修正提案に対応していたら、著者は、版元デスクに『この人たちは本質をわかっていないから、制作陣を変えてくれ』と伝え、制作陣を解除させたことが、裁判 になって初めて版元の書籍局局長より明かされました。シナリオのどこに問題があったのか、今も明かされていません。
しかも、制作陣を変えて刊行された本は、私たちが初めに出し、著者から『キャンプ場は自然破壊もあるからNG』と却下されたシナ リオ案で提示していた“キャンプ場が舞台のマンガ設定”という根幹を、無断で採用されています。4か月も作業をしたのに、その費用を1円も出さないことが合法となるなんて、とても驚いています」
再びIさんは、声を絞り出すようにして、次のように語りました。
「ライター、漫画家はほとんどがフリーランスで、出版業界はフリーランスで成り立っています。今回の判決のように、途中で何かトラブルがあったとき、出版社は勝手に仕事を打ち切って支払いもしなくていい、ということがまかり通ってしまったら、大変なことになります。悪用されないことを願うばかりです」
出版ネッツでは、今回の不当判決の内容を共有し、メディアにかかわるフリーランスの今後を考えていくために、4月27日(月)に報告集会を開きます。
詳細は、https://union-nets.org/archives/9849 をご覧ください。
(文:松本浩美)


