■出版界の皆さんへ 出版ネッツアピール
出版界の皆さん。私たちは出版界のフリーランサーの労働組合<出版ネッツ>です。正式名称を<ユニオン出版ネットワーク>といい、出版労連に加盟しています。
私たちは、1987年1月31日に個人加盟制の労働組合として出版労連の中に誕生し、出版フリーランサーの地位向上と権利擁護のために活動を続けてきました。
現在、全国に約200人のメンバーをもち、毎年160%の伸びで増加しています。関西エリアでは、出版ネッツ関西が自立的な運営を展開していることをはじめ、東北、東海、九州にまで加入者が広がっています。
出版の世界は、作家、記者、写真家、挿画家、装丁家をはじめ、編集者、デザイナー、校正者など、多くのフリーランサーの力によって、多彩な表現、言論活動を支えることができているのだと私たちは考えます。出版界という森があるならば、フリーランサーは、森を飛び交う鳥のように、森を潤す地下水のように、流動性はありながらも、森を育てています。
私たち出版フリーランサーは基本的に専門職であり、より良い出版文化を創造していくためには、フリーランサーの権利を尊重し、使い捨てにされることなく安心して働ける環境が必要なのだと確信しています。
しかし、残念なことに、料金の不払い・未払いや、突然の仕事の打ち切りに悩むフリーランサーの声が止む日はありません。これらは、仕事の受注・発注時における<契約>を軽んじる日本の出版界の慣習が原因となっている場合が多いのです。また、仕事の継続、発注にまつわる<いやがらせ>などの事例もあります。
私たちは、出版界に働く仲間として次のような要求をかかげ、皆さんの理解を広げていきたいと考えます。
1.仕事の成立した段階での速やかで、対等な、契約関係の明示。
2.契約における不公正なペナルティ条項の禁止。仕事の範囲と料金、支払い期日の明確化。
3.著作権、著作隣接権等の保護。二次使用の許諾の徹底。
4.印税条件の一方的切り下げの禁止。増刷連絡などの徹底。一方的な断裁、絶版などの禁止。
5.仕事量と難易度に見合った、職能をたかめていくにふさわしい最低料金制の確立。
6.年ごとの料金の改定・引き上げ。
7.対等で誠意ある協同作業者としての人間関係、モラルの確立。作業場内外での非難等の禁止。
8.一方的な仕事の打ち切り等の禁止。
9.個人の著作に関する、言論、表現の自由の保障。
10.デジタル化に伴う著作権侵害の禁止。
11.デジタル化に伴う作業環境、システムの変化による作業内容・料金の一方的変更の禁止。
12.版元責任の明確化。外部へのいわゆる<丸投げ>の禁止。
など。
私たちは、さまざまなトラブルは、双方の対等な関係での話し合いと調整によって予防し解決できるものと考えており、それは、言論・表現の自由の場である出版界にとっては当然のこととして受け入れられるものと考えています。
優れた出版人の育成と、出版界に蓄えられた諸先輩の財産をまもるためにも、フリーランスの権利を認め活かすことは、出版文化の質を向上させ、パブリッシャーとしての使命を全うするために有効であると考えます。
出版界の業界団体および版元、版元労働者、フリーランスとが健やかな共生を創造していくため、<出版ネッツ>としても積極的な役割を果たしていきたいと考えており、今後の協力関係を切に希望し、以上表明します。
1997年7月
日本出版労働組合連合会/ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
第14回定期大会