2月2日第3回勉強会レポート―――生成AIに対するクリエイターの声を聴く
3回目となる「生成AI勉強会」は、2月2日(月)の午後7時から、オンラインで開催されました。
第1回は生成AIの普及で顕在化してきた著作権の問題、第2回は生成AIの引き起こすディープフェイクが社会にもたらす影響をテーマに、それぞれの分野の専門家から話を伺ってきましたが、今回は日本フリーランスリーグが実施したアンケート調査に寄せられた、生成AIに関するフリーランスの生の声から率直な思いや意見を読み取り、今現在私たちが置かれている状況を見極めるという、極めて意義の深い勉強会となりました。

■「生成AIは生計への脅威となる」との回答が約9割
登壇していただいたのは、一般社団法人日本フリーランスリーグ(FLJ)代表理事の西野ゆかりさんです。西野さんは連合に在籍されていた頃から、フリーランスの働き手に接する機会を通してフリーランスの権利を守る団体を結成する必要性を感じられ、2024年にFLJを立ち上げました。FLJは主に文化・芸能・芸術分野で活動しているフリーランスを対象に、既存の職能団体やユニオンとも横断的に連携しながら、フリーランスが社会に声を届けていくための「連帯のハブ」となることを目指しています。
今回西野さんから発表していただいた「生成AIと日本のクリエイターの未来についての調査」は2025年10月に実施され、回答者数は約25,000人にものぼる大規模なものとなりました(出版ネッツもこの調査に協力しています)。回答者の属性で最も多かったのがイラストレーターで全体の半分以上を占め、次に多かったのが漫画家、続いてライター、デザイナーとなっていました。
詳細については調査結果をご参照いただきたいのですが、今般回答者数が特に多かったイラストレーターなどは、言ってみればコンテンツ産業の「供給基盤」の最たるものであり、そうした職能の働き手による、昨今の生成AIについて抱いている危機感が調査結果からも読み取ることができます。たとえば、「生成AIは自身の生計にとって「重大な脅威となる」との回答が88.6%(「強くそう思う」65.3%+「ややそう思う」23.1%)にのぼっています。

また、生成AIの普及が短納期の案件や低価格の案件の増加を助長しているという指摘がある一方で、フリーランスのクリエイターが自身の仕事の効率化に生成AIを活用しているという側面も見られ、この問題はなかなか一筋縄ではいかない複雑さも有していることが感じられます。
それでも、クリエイターが生成AIに関する国などの政策に対して求めることとして、「作品の無断利用の防止」が最も多いということは留意すべき点かと思います。たとえば、学習データの詳細リスト公開義務化を支持する声は92.8%(「非常に重要だと思う」85.8%+「ある程度重要だと思う」7.0%)を占めました。

日本では規制の方針がなかなか定まらない中、創作の業務以外の仕事で収入を補う方向に転ずるなど「あきらめ感」をにおわせる回答も一部に見られました。
■クリエイターの声を束ねる団体が必要
西野さんは生成AIの活用と、文化創造のエンジンとも言える「絵を描く人」を守ることの両立は、コンテンツ産業が発展する未来につながる戦略となるという立場から、行政への提言として、クリエイターの課題を把握し政策へと反映する「クリエイターの統括機関」を作ることが有効ではないかという見解を示されました。一方、クリエイターへの提言として、クリエイターの声を束ねる「ギルド」のような団体を組織していくことが必要ではないかと話されました。
現状では、日本の政策はクリエイターよりも生成AIの利用者側に寄りすぎているのではないかという見立てで、クリエイターへの報酬の少なさや、日本における倫理上の規制等の甘さがもたらすディープフェイクなどの好ましくない態様での利用が野放しになっている状況なども指摘されました。
参考情報として、韓国では3年に1度大掛かりな実態調査を行うなど、国を挙げてフリーランスのクリエイターを守る態勢が整えられつつあり、労働法令においても日本よりフリーランスの保護が厚いなどの実情があることから、西野さんは機会をみて韓国の動きについての勉強会も開催したいと話されていました。
■次のステップに向けて議論が白熱――ギルド、ティープフェイク、規制を求めるキャンペーンなど
西野さんの報告を受けて、質疑応答と自由討論が行われました。今回の勉強会では、著作権の問題を採り上げた第1回の勉強会で「当事者の立場」から報告をしてくださった漫画家のHさん、そして第2回の勉強会の講師を担当していただいたジャーナリストの内田聖子さんにもご参加いただいており、それぞれ貴重なご意見を寄せていただきました。
西野さんが一つの方策として提示されていた「ギルド」については、一部クリエイターの誤解もあってSNS上などでの反発も多い現状であるという指摘がHさんからなされました。それを受けて、そのような誤解を払拭して議論を進めていく必要があるのではないかという議論が展開されました。
また、前回ディープフェイクについて詳細な解説をしてくださった内田さんからは、日本が「クリエイターの権利保護」の面で世界に後れを取っているという認識がある一方で、実は日本以外のいずれの国においても明確な答えは未だに出せていない、というご意見をいただきました。合わせて、今回のFLJの調査はかなりボリュームのあるもので、資料としても価値が高いものであると考えられる、と評価をされていました。
その他、任意団体「フリーランスユニオン」の土屋俊明共同代表からは、裁判の証拠書類作成に生成AIが使われている事例が報告され、生成AIの利便性とリスクの双方を認識し、無批判・無防備な普及がもたらす冤罪の可能性など、危機感をもって情報共有していくべきという意見が出されました。
出版ネッツ組合員(イラストレーター)からは、「アンケート結果ではクリエイターの深刻な危機感を確認できた。海外ではAI規制法が制定され始めている。有名俳優らの『AIはイノベーションではなく、窃盗』との反AIキャンペーンも広がっている。自分個人の考えは生成AIが規制もなく広がってしまうと、著作権侵害だけでなく、絵を描く楽しみ方さえ伝わらなくなってしまい、文化をも奪うものと感じる。日本でも規制を求めるキャンペーンをできれば」との発言がありました。
大変白熱した議論になったため、今般出版ネッツが発表した「生成AIにおけるクリエイター保護のための適切な法規制を求める声明」を紹介する時間がなくなってしまいましたが、3回にわたる勉強会の取り組みを通してプロジェクトチームが作成したものですので、ご一読をいただければ幸いです。
文:永田由美(関東支部/トラブル対策チーム・生成AI問題勉強会PTメンバー)
※質問2と8の図は、日本フリーランスリーグの許可を得て「生成AIと日本のクリエイターの未来についての調査報告」より転載
*日本フリーランスリーグ「生成AIと日本のクリエイターの未来についての調査結果」
https://drive.google.com/file/d/1Aw3nn12mPNXy4Ex9403V6MewvRjW8gHr/view
*出版ネッツ「生成AIにおけるクリエイター保護のための適切な法規制を求める声明」
https://union-nets.org/archives/9769https://union-nets.org/archives/9769

