生成AIにおけるクリエイター保護のための適切な法規制を求める声明
2025年5月、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立し、同年12月、政府はAI基本計画を閣議決定しました。
国を挙げて生成AIの利活用が推進される中、多くのクリエイターが著作者としての権利と生計(仕事の継続)への脅威と不安を抱いています。
出版ネッツは、生成AIと著作権、ディ—プフェイクについての勉強会や「生成AIと著作権アンケート調査」結果を踏まえ、生成AIについての法規制を求める声明を発出しました。周知にご協力をお願いいたします。
生成AIにおけるクリエイター保護のための適切な法規制を求める声明
2026年2月1日
ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
生成AI開発や利活用が急速に進展しています。生成AIはイラストや動画、文章などを手軽に出力できる一方で、著作権の侵害やディープフェイクの拡大など大きな問題をはらんでいます。2025年5月、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立し、同年12月、政府はAI基本計画を閣議決定しました。AI法や基本計画には、「イノベーション促進とリスク対応の両立」がうたわれていますが、リスク対応は後回しにされ、バランスが崩れているのが現状です。
このような状況下、多くのクリエイターが無断で自身の創作物を生成AIに利用され傷つき苦しんでいます。作家狙い撃ちの生成AIによる嫌がらせにあっているという声も寄せられています。さらに多くのクリエイターが著作者としての権利と生計(仕事の継続)への脅威と不安を抱いています。他者の権利を侵害して生成される画像や動画、テキストが野放しになってしまってはコンテンツ産業に未来はありません。
私たちはイラスト、マンガなどコンテンツ産業に携わるフリーランスのユニオンとして、生成AIについての法規制を求めます。AI規制法(仮)の基本方針として、基本的人権と著作者としての権利の保護を明示し、透明性、公正性、さらに説明と合意を担保することが求められます。また、実効性確保のために、違反行為を申告できる窓口、申し出があった場合の是正措置や罰則を定めることも必要です。すでにヨーロッパや韓国などではAI規制法が施行されています。
クリエイターの権利保護は、喫緊の課題です。
上記基本方針に基づき、具体的に策定するルールとして、以下の4点を求めます。
1 学習データの開示義務化
生成AIは著名なコンテンツを含む多くの表現を無断で取り込んでいます。どの著作物を学習させてつくられたのか、その権利関係情報を含む透明性の確保が必要不可欠です。学習データの開示がされないと、自分の作品が学習されているかどうかを確認することができず、権利侵害の有無の確認やオプトアウト(事後の不同意)したり公正な収益還元のためのアクションを起こすこともできません。
2 生成AIの利用有無のラベリング義務化
生成AIを利用した制作物であるにもかかわらず、それを伏せて公表するケースがこれまで多く見られました。たとえば、生成AI利用を伏せた制作物がコンペに応募されれば公正な審査ができなくなります。また写真の場合は、実際にあるものなのか、生成AIでつくられたものなのかが一目でわからないと混乱をきたします。
生成AI事業者や利用者には、 生成AIを利用してつくられた制作物なのかどうかを明示する義務を課す必要があります。同時に、SNSのプラットフォーム企業にもラベリングが適切に行われているか管理・監督を行う責任を課すことを求めます。
3 オプトイン、オプトアウトの義務に関するルールの策定
クリエイターにとって著作権は非常に大事な権利です。無断で自分の著作物が短時間に大量に模倣されてしまうことは、数多のクリエイターによって支えられているコンテンツ産業の裾野を確実に衰退させます。生成AI事業者からクリエイターへのオプトイン(事前の同意)の義務化、クリエイターからのオプトアウト(事後の不同意)方法策定の義務化は、今後のコンテンツ産業の健全な発展のために必要不可欠です。
とりわけ著作物の利用にあたって、著作権者に許諾を得ること(=オプトイン)は、著作権法の原則です。現行の著作権法では、著作物を生成AIの学習データとする場合のような情報解析を目的とする利用であって、著作物に表現された思想や感情を享受することを目的としない場合には、原則として許諾不要とされています(第30条の4)。しかし、その後の生成AI技術の急速な進展により、状況が大きく変化しています。今一度この条項の見直しを含め、著作権侵害を容認しないという原則の確認が必要です。
4 ディープフェイク画像・動画・テキスト生成への罰則規定の導入
生成AIには著作権以外にも問題点があります。それはディープフェイクの問題です。災害時や選挙期間などにおける政治的ディープフェイクの拡散は、人権侵害を引き起こすだけでなく、民主主義の基盤を危うくし、人々の「知る権利」を阻害します。とりわけ性的ディープフェイクの被害は深刻です。しかし、現在これを規制する法律はありません。早急な対応が求められています。
現状では、生成AI画像の「類似性」が認められたとしても、フリーランスのクリエイターやディープフェイクの被害者が個人で裁判などを起こすことは非常に困難です。権利侵害を予防するためにも、法的な規制と相談・申告できる窓口が必要です。 著作権法上の権利と対価(報酬)は、クリエイターであるフリーランスの創作の源泉であり、ひいては文化的価値を生み出す源泉です。クリエイターの権利保護と創作環境の整備・維持のために、AI規制法の制定を強く求めるものです。
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