偽装フリーランス対策に国が前向き、研究会での当事者ヒアリングは「検討」

■厚労省と政策ディスカッション
労働者と同じように働いているのに業務委託扱いされる。労働委員会に申し立てても「労働者性があるか」という入り口の問題で時間ばかりかかる――。こうした問題の解決策を探ろうと、出版ネッツ、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会など10団体は厚生労働省に8月18日、申入書(※)を出した。
それを受け、8月27日、国会内で厚生労働省との政策ディスカッションが行われた。立憲民主党フリーランス支援チーム事務局長の井坂信彦衆議院議員が設定した会合である。厚労省からは11名(労働基準局、職業安定局、中労委事務局)が出席し回答、時間制限のある中、具体的で前向きな議論が交わされた。
■「労働基準法における『労働者』に関する研究会」に関して
誰が労働者かという基準(「労基法上の労働者性」判断基準)の見直しなどを検討する「労働基準法における『労働者』に関する研究会」での当事者団体からのヒアリングを求める出版ネッツ・杉村和美さんの意見に、「今明確なお答えは難しいが、ご趣旨はよく受け止め検討する」(労働条件政策課)と答えた。
「労基法上の労働者性」判断基準の見直しに関連し、「経済的従属性の判断によって逆に不利益な取り扱いを受けることがないようにしなければならない」という要望は「重要な視点」(労働条件政策課)と述べた。
■労基署での対応、チェックリストも活用
業務委託契約で働いているが労働者ではないかと思った人の労働基準監督署(労基署)での対応については、「チェックリストを用いてまず相談者にセルフチェックしてもらっている。その上で申告されたいということであれば受理し、立ち入り調査し、事実関係を確認した上で労働関係法令の違反があれば指導している」(監督課)とフローを説明した。
労基署が「労働者」と認め労災支給決定も出たのに会社が「雇用」に切り替えない出版ネッツ組合員の事例では、「一般論」と断りながらも「社会保険料云々で(国と会社とに)争いがあることは、原則的には労働基準法の判断に影響しない」(監督課)と明言した。
労働者かどうかの判断基準を業種別に示すべきではとの要望には、業種別かはともかく、「研究会での結論がまとまったら何らかの周知媒体を作ってわかりやすく伝えていく」(労働条件政策課)考えが示された。
■三面契約の問題では「労基署と連携」
三面契約(働く人、直接契約した会社、働く先の会社の三者関係)をめぐる争議をたたかい解決した出版ネッツ組合員も参加し「(違法派遣の際、派遣労働者を派遣先に雇用させる)労働契約申し込みみなし制度をもっと使いやすく」と要望。厚労省は「裁判によらずに法律関係を安定させる」大切さにふれ、派遣法担当部局と労基署とで「連携をしっかりしたい」(需給調整事業課)とした。
雇用保険の資格確認請求がたらい回しされた三多摩労組組合員の事例では、厚労省としてお詫びし指導を約束(雇用保険課)。フリーランスユニオン・栗田隆子さんから出された「雇用だった人をフリーランスに変える問題」では、井坂議員のコメントも受け、「偽装フリーランスの問題に対応する一環としてこの研究会もある」(労働条件政策課)と述べた。
■労働委員会審査「迅速化が非常に重要
労働委員会審査については「不当労働行為事件の早期解決のためには迅速化は非常に重要な課題と認識している」と問題意識の共有を確認した上、「労組法上の労働者性」の判断の仕方を説明した(労働関係法課)。三多摩労組の朝倉玲子さんが提示した「事業者性だけで労組法上の労働者性を否定した労委命令」については、労組法上の労働者性判断基準についての考え方を整理した、厚労省労使関係法研究会の報告書やフリーランスガイドラインの「基本的な考え方とは相容れないという印象を持った」(労働関係法課)と述べた。
「厚労省との政策ディスカッション」は、今回で3度目だ。フリーランス法制定時の国会附帯決議や「労働基準法における『労働者』に関する研究会」の始動といった動き、そのベースにある出版ネッツも含めた当事者の声と運動も受けて、厚労省の各担当者からは前向きな姿勢が伝わってきた。フリーランスの権利確立は、これからが本番だ。
(北健一/執筆・編集)


