多様化する漫画制作現場から~著作権は? 報酬の配分は?
2026年1月28日、漫画原作者Kさんの裁判の体験をもとに、漫画制作における契約書や著作権について学ぶ会を開きました。後半では、多様化している漫画制作の現場の様子を知ることができました。

プライバシーポリシーへのサインは著作権譲渡の合意とはみなされない!
Kさんが起こした裁判は、著作権法違反として漫画の配信差し止めを求めた裁判です。その中では、著作権が漫画原作者のKさん/制作会社SS社のどちらに帰属するのかも争われました。SS社は会員登録制の仕事発注システムになっており、会員登録の際に表示されるプライバシーポリシーには「業務委託の成果物の著作権はSS社に帰属する。著作者人格権不行使」が盛り込まれていました。しかし、プライバシーポリシーにサインしたとしても、著者合意の上での著作権譲渡をしたことにはならないという結論になったとのこと。ただし、別途契約書を作成し、そこに著作権譲渡などが書かれていると有効となる場合が多いので、その項目は外してもらうよう交渉するのがよいと話されました。
漫画制作に携わる組合員同士、ノウハウを交換
後半では、ウェブトゥーン(*1)や紙媒体で漫画を描いている人たちも交え、漫画制作の現場の働き方や就業条件などの情報交換・交流が行われました。同じ電子コミックでもウェブトゥーンの制作現場は、社員編集者の統括の下、原作/シナリオ、ネーム(*2)、作画、着色、背景、仕上げなど、細かい分業体制が敷かれていることに驚きました。出版業界よりもITやゲーム業界に近く、著作権は会社が持つという慣行になっているそうです。売り方も、出版漫画と違い、プラットフォームに課金額が入り、そこからさまざまな手数料が引かれ、制作会社に入ってくるのですが、無料で読ませる仕組みなども導入されており、複雑なシステムになっています。
原稿料のほかに印税(配信率料)がある場合、その配分は、一般的なコミカライズでは、原作者・ネーム制作者・作画(漫画家)のうち漫画家が一番高いそうです。ウェブトゥーンの仕事をしているMさんからは、原作者が一番高くなっているようだとの話が(ただし、原稿料は作画が最も高い)。紙媒体で描いている漫画家さんからは「ネームで面白い漫画になるかどうかが決まるのに、ネーム制作者の印税が少ないのには疑問が残る」との感想もありました。
その他、仕事の受注の仕方、原作者と漫画家との関係性、報酬アップの交渉術など、ふだん聞けないような漫画業界の話が満載の1時間半でした。
(杉村和美/編集)
(*1)スマートフォン上で読みやすい縦スクロール形式のコミック
(*2)コマ割りや構図、セリフなどをラフに描いたもの。絵コンテ


