出版労連が「表現の不自由展・その後」展示中止に対する声明を発表

「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」展示中止に対し、出版労連が次のような声明を発表しました。
私たち出版ネッツは、この声明に心から賛同します。

声明
「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれたことに抗議する

 「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が、8月3日をもって中止に追い込まれたことに抗議します。
 表現の自由が侵害されていることを表現しようとした芸術活動自体を、暴力と脅迫で奪う理不尽に、憤りを禁じえません。
 自由で多様な表現活動は、必ずしもすべての人に心地よく、感動をもたらすものではありません。心地よさと感動をもたらすことだけが表現活動の意義・目的とは限りません。ときに不快に感じ、目を覆いたくなる、耳を塞ぎたくなる、指摘をされたくないような表現も含めて、多様な表現が共存していられることが重要です。
 「表現の不自由展・その後」は、公立美術館などで展示不許可の対象になった作品を集め、その理由とともに展示したものです。なぜ展示されなかったのかを、来場者一人ひとりが、自分の目で観て、感じ、考える貴重な機会です。その機会を、為政者の側が奪ってはなりません。本来、表現の自由を担保しなければならない立場にあるにもかかわらず、 「少女像」の撤去を要請した河村たかし名古屋市長、補助金凍結を示唆した菅義偉官房長官らの言動は、きわめて問題があります。為政者が、表現活動を区別したり、差別したり、敵視したりすることなど、決してあってはなりません。
 また、私たち市民がそれを看過し、許すことは、自ら表現の自由を手放すことに繋がります。これらは、多様な言論・表現・芸術活動を意に沿わないからと封じ込めしてしまう、今の日本をはじめ世界の各地で広がりつつある不寛容さを、助長し容認する行為です。
 現在の日本では、かつては言えたことが言いづらい、かつては表現できたことが表現しづらい、そんな状況になりつつあります。表現者、言論人、芸術家、市民の手から言論・表現の自由が急速に奪われつつあります。
 一握りの人々が脅迫と暴力を用いて芸術の祭典を中止に追い込み破壊したことを、出版に働く私たちは絶対に許せません。
 芸術・表現・言論の自由を求めるすべての人にとって、多様性はかけがえのない源泉です。脅迫や暴力、同調圧力により、この多様性とともに私たち自身の尊厳・人間性が奪われることが二度とあってはなりません。
 私たちは、多様性を侵し、個人の尊厳と人間性を踏みにじる脅迫も暴力も絶対に許しません。「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれたことに抗議するとともに、表現の場を奪われた芸術家たちに連帯を表明するものです。
 これからも私たちは、黙りもおもねりもせず、自らの良心と職能に従って言論・表現の活動に携わっていきます。

2019年8月6日
日本出版労働組合連合会・中央執行委員会

※私たち出版ネッツ出版労連(日本出版労働組合連合会)に加盟しています。