月刊フォーラム 2017年5月号(2/3)

要は、根回しとイメージ戦略

年に一度の楽しみは、約1週間の海外旅行です。時期は、観察したい動物が観られる季節に合わせています。アラスカでクマを観た時は8月~9月初旬、ニュージーランドでペンギン観察をした時は11月にスケジュールを組みました。

旅行計画は1年ほど前から立て、取引先には1~2ヶ月前から1週間ほど休むことを伝えています。こうした旅行を続けているうちに「毎年、海外で遊び呆ける人」というイメージが定着。「今年はどこへ行くの?」と聞いてもらえるようになり、遊びに行きやすくなりました。

旅行中、仕事をすることはありません。現地では携帯電話の電源をオフにし、留守番電話応答メッセージに帰国予定と帰国後連絡する旨を吹き込み、のんびり過ごしています。

とはいえ、「どこかで書かせてもらえるかも」という下心から、一眼レフ2台とコンデジを持参し、現地で見聞きしたことを記録しています。アラスカの北極圏へ行った時は、現地の暮らしや環境について執筆を依頼されました。一度で二度美味しかった旅の思い出です。

(井本旬子/取材・執筆)


野生のイエロアイドペンギン


目の前で観たコディアックベア

神楽に魅せられて

20年ほど前の11月末、神楽通の友人に誘われて、宮崎県の中之又(なかのまた)という山あいの集落を訪ねた。中之又の神楽には狩猟文化の匂いが残っていて、鹿の頭をかたどった珍しい面が登場するという。

夕方、境内の仮設舞台で神楽が始まるころには、舞台のまわりは村の人たちでいっぱい。過疎化が進む中之又だが、都会に出た人たちもこの日には帰ってくる。

目当の演目、鹿倉舞(かくらまい)が始まる。件の面は鹿の頭の骸骨のような形で稲荷神だという。ほかにも宿神(しゅくじん)や荒神(こうじん)など古色を帯びた面を着けた舞が次々と奉納される。自然に対する畏怖の念や感謝の気持ちを連綿と伝える伝統にありがたささえ感じながら、空が白むまで見ていた。

鹿倉舞の鹿面にはぶきみな迫力がある
(写真:高見乾司)

夜を徹して舞われる中之又の神楽

1996年に伊勢の猿田彦神社の本を作った。その時から宮司らと各地の神楽を見る旅を何年か続けた。20年勤めた出版社を辞めたのは、この旅に参加したいがゆえだった。

何百年も続く神楽が残っていても、中之又のように後継者もままならないところが多い。見に行くことが少しでも応援になればうれしい。神楽の本といえば民俗学の専門書ばかり、平易な入門書があればと考え、素人の強みで、仲間と別冊太陽『お神楽』を作った。

東日本大震災の後、東北の民俗芸能の活動状況を調査する仕事を引き受けた。民俗芸能の宝庫と言われる東北には、神楽、虎舞(とらまい)、鹿踊(ししおどり)などの団体が数えきれないほどある。最初に訪ねた岩手県大槌町小鎚神社の祭礼では17の団体が奉納、鎮魂の思いが込められた舞い、踊り、演奏に心が熱くなった。以来、祭りの季節になると東北を訪ね、時に雑誌にルポを書かせてもらっている。

個人的に行くことも多く交通費・宿泊費もバカにならない。普段はなるべく倹約し、神楽の季節を待っている。

(原 章/編集・執筆)



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